直流アークによる太陽光発電システムの火災リスクとその対策

直流アークの危険性

アークとは大気中に電子がプラズマ状態で継続して放電される現象で、直流電気回路で発生した場合を“直流アーク”、交流電気回路で発生した場合を“交流アーク”と呼びます。
アーク現象が継続すると、周囲温度が約1万度まで熱せられる可能性が有り、火災事故の原因となります。太陽光発電システムでは、直流アークが最も危険な火災発生要因であると指摘されています。

直流アークによる火災発生

  1. 太陽光発電システムの直流回路の一部が断線や接触不良の状態になった場合、直流アークが発生します。国内に設置されている太陽光発電システムは、一般に直流アークに対する検知・社団機能を持っていない為、直流アーク発生時も異常発報や異常停止が行われず、発電は継続します。
  2. 電圧が周期的にゼロとなる交流アークと異なり、直流アークは回路電圧が一定に保たれる為自然消滅しにくく、また太陽光発電の場合は一旦生じると 太陽光が有る日中は自然消滅する可能性は極めて少ないと考えられます。
  3. 直流アークが継続した場合、発生箇所周辺の構造物が長時間高温にさらされる事となり、構造物が発火点以上に到達した場合、火災に至ります。
直流アークによる電線(銅線)からの発火

直流アークの対策

米国では2011年、太陽光発電設備からの火災事故を防止する目的で,建築物上に太陽光発電システムを設置する場合、直流電気回路への直流アーク検出遮断器(DC-AFCI:Arc Fault Circuit Interrupter)を組込む事が義務づけられました。

直流アーク検出遮断器(DC-AFCI)とは、下の機能を有した装置を言います。
(1)直流回路の電圧・電流の時間変化を常時監視し、直流アーク特有の波形変動を検出する直流アークセンサー
(2)直流アークセンサーの発報をうけ、太陽光発電システムを停止させ、火災事故に至る前に直流アークを消滅させるための遮断機能

直流アーク検出遮断器(DC-AFCI)は、アーク発生理由の如何にかかわらず、直流アークを検出した場合速やかに太陽光発電を止める為、「太陽光発電システムからの火災発生防止の最後の砦」と称されています。

参考

(1) 直流アーク検出遮断器(DC-AFCI)の組込が義務化されているのは、現在のところ米国のみです。日本の国内規格が参考にするIEC規格(International Electrotechnical Commission)は、現在米国規格にもとづいて直流アーク遮断に関する規格内容が検討されています。

(2) 太陽光発電システムで発生する直流アークには、発生する原因やそれに由来する電気回路構成により、下記の2種類が考えられます。
 (2-a) 電線の断線やネジの緩みに起因する直列・直流アーク
 (2-b) 台風や地震等でパネルの固定が外れ、パネルが折り重なる様な状態の場合異なる直流回路間で発生する並列・直流アーク

当社が販売する直流アーク検出遮断器(DC-AFCI)は直列・直流アーク及び並列・直流アーク双方を検出し、発電を止めることが可能です。 

但し直流アーク検出遮断器(DC-AFCI)が正常動作し発電が停止しても、並列・直流アークが発生した場合、発生個所やアーク発生個所を含む直流回路の条件により、並列・直流アーク現象が継続し、火災に至る可能性は残ります。

(3)当社が販売するアーク検出遮断器(DC-AFCI)は、火災時に消防士の感電事故防止を規定した米国規格NEC2014には準拠していますが、NEC2017(最新版)には準拠しておりません。

住宅用直流アーク検出遮断器(DC-AFCI)のご紹介

産業用直流アーク検出遮断装置、直流アークセンサーに関しては、直流アーク検出遮断器を御覧ください。

住宅用アーク検出遮断器(AFCI)

製品イメージ

 参考資料

  1. 消費者庁 事故情報データバンク https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/accident/search(太陽光発電、火災等のキーワードで過去の事故件数や内容が検索できます。)
  2. 消防庁 太陽光発電システムを設置した一般住宅の火災における消防活動上の留意点 https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/250326_jimurenraku.pdf
  3. その他インターネット上に、多数の記事やコメントが上がっています。「太陽光発電」「直流アーク」「火災事故」等のキーワードで検索が可能です。